Activity Report
荒廃地から再生へ クルックフィールズに学ぶ再生可能エネルギーと循環農業の実践 (2025年3月22日 現地視察レポート)
東京湾アクアラインを使えば都心から約1時間というアクセスがよい千葉県木更津市にある「クルックフィールズ(KURKKU FIELDS)」を、2025年3月22日に大エネ(大地を守る・くらしからエネルギーを考える会)の仲間と一緒に訪れました。
敷地の広さは東京ドーム約6個分(約28万平方メートル)!スタッフの方によるガイドツアーに質疑応答を交えながら、クルックフィールズが実践しているサステナブルな取り組みをたっぷり体感してきました。
このレポートでは、特に再生可能エネルギーへの挑戦を中心に、荒廃地の再生と循環型農業の実践についてご紹介します。
「負の遺産」からの出発
この土地はもともとは産業廃棄物の残土が埋め立てられていた荒れ地でした。それを音楽プロデューサーの小林武史さんが「次の世代も使い続けられる農地にしたい」という想いで2010年にプロジェクトを立ち上げ、開墾を始め、「耕す木更津農場」(大地を守る会にも出荷していただいています)としてスタートさせたんです。約10年かけて土壌改良を重ねた結果、今では施設内の農地のすべてが「有機JAS認証」を取得しているとのこと。並々ならぬ情熱で、「負の遺産を食といのちの場として蘇らせる」——そのコンセプトが、しっかりと形になっていました。
再生可能エネルギーへの取り組み~太陽光発電とマイクログリッドの構築~
クルックフィールズが太陽光発電に本格的に取り組み始めたのは2012年のことでした。2011年の東日本大震災以降、「エネルギーのあり方」についてより一層考えるようになり、原子力に代わるエネルギーの可能性として太陽光などの自然エネルギーに着目しました。敷地内の小山の斜面に設置されたソーラーパネルの総出力はなんと約2メガワット(2,000キロワット)。
そして転機は2019年。千葉県を直撃した台風15号による11日間の停電です。「災害時に無力だった」という苦い経験から、方針を「売電」から「自家消費」へと大きく転換しました。2021年2月には、太陽光発電(294kW)にTesla社製の大型蓄電池Powerpack 3台(合計容量669kWh)と最適制御システムを組み合わせたマイクログリッドを構築し、その運用をスタート。敷地内に約1kmの自営線を張り巡らせることで、晴天時には施設全体の電力をほぼ自前で賄える体制が整いました。年間の自家消費率は約80%を目標としており、電気代の年間約900万円削減とCO2排出量の年間約191トン削減が期待されています。
地域防災との連携
このマイクログリッドの意義は、自家消費だけにとどまりません。2021年4月には木更津市と「災害時における応急活動の協力に関する協定」を締結しました。停電時には外部の電力から切り離して蓄電池を自立運転させ、重要施設で1.5〜2日分の電力を確保。周辺住民の方々にはトイレやシャワー、充電設備を提供するほか、施設で生産・加工した食料品もお届けできる体制を整えました。エネルギーの自立が、そのまま地域の安心につながっている——とても頼もしい取り組みだと感じました。
「生態系の一部」としてのエネルギー
昨今、大規模な太陽光発電(メガソーラー)の設置のあり方が各地で問題になっていますが、ここでの取り組みとの違いについても率直に聞いてみました。スタッフの方からは「豊か自然を壊してエネルギーを作るのではなく、すでに壊れた土地をエネルギー生産の場として再定義することが私たちのアプローチです」という力強い言葉が返ってきました。ソーラーパネルの周囲では有機農業が営まれ、発電した電力は水の汲み上げや家畜の飼育にも活かされています。また、化学薬品を使わない「バイオジオフィルター」で浄化された施設排水は敷地中央の大きな池に集められ、再び太陽光の電力でポンプアップして各施設に供給されます。地産地消のエネルギーが、まさにいのちをつなぐ循環の一部になっていました。
循環型農業と土地の再生
クルックフィールズの農業は、エネルギーだけでなく食の面でも循環を大切にしています。有機野菜・平飼い養鶏・水牛や山羊による酪農が共存し、場内の雑草は山羊の餌に、家畜の糞は堆肥となって農地に戻ります。さらに地方で獣害をもたらすイノシシやシカを施設内で処理・加工してハムやソーセージとして商品化するなど、地域の困りごとを「おいしい解決策」に変えてしまうアイデアには思わず唸らされました(ソーセージ。ジビエの力強さをダイレクトに感じる野性味あふれる味でした!)。さらに、放置されていた谷津田を再生して米を栽培し、その米でお酒を造る構想も進行中とのこと! 荒廃地を「いのちをつなぐ循環」の場へ——その挑戦はまだまだ続いています。
おわりに
クルックフィールズの取り組みが教えてくれるのは、再生可能エネルギーは「ただ電気を作る装置」ではないということでした。農・食・自然・地域と深くつながりながら、はじめて本当のサステナブルが生まれる。産業廃棄物の埋め立て地として荒廃していた土地が、今や地域の防災拠点であり、有機農業の発信地であり、アートの聖地へと見事に変貌を遂げていました。エネルギーと農業と地域をつなぐ「自立分散型社会」のひとつのモデルとして、全国にその可能性を伝えていってほしいと、心から思った視察でした。
