毎日のように食べている野菜たち。彼らがテーブルに並ぶ前は、畑ですくすくと育って収穫されているのは知っている人は多いはず。しかし、収穫するよりも前のことは、知る機会が少ないと思います。そんな野菜のタネについて、詳しくご紹介します。

野菜のタネってどこにある?

 野菜のタネってどれかご存知ですか?わかりやすいのはトマト。ゼリー状の部分に包まれてタネがいますね。あとは、オクラやピーマンは花が咲いて、タネが育つ前のものを食べています。

チンゲン菜、キャベツはタネよりももっと前の花が咲く前の状態で食べていたり、枝豆やとうもろこしは種そのものを食べていたりしています。ひとことで野菜といっても、食べるタイミングは千差万別。育って実るまでの段階のどこを食べれば美味しいのか、私たち人間は長い時間をかけて見つけ、食べているのですね。

タネってどうやってできるの?

 野菜は、タネを蒔くか、苗を植えて食べごろになったら収穫され食卓に届きますが、その野菜からはタネは採りません。
そのまま収穫をせず枯れるまで育て、本来の野菜の一生を全うする頃にタネができます。

例えばきゅうりは、普段食べているものより長さも太さも何倍大きく育て、果皮が黄色くなります。きゅうりの語源でもある「黄瓜」はここに由来します。人がイチから育て、姿かたちが好ましい、おいしい、丈夫に育つタネを選別して次の世代につないできました。一般的に生産者さんは、タネを作る種苗会社からタネを買い、育てています。

タネにも個性があります

 野菜のタネには、大きく分けて「在来種(ざいらいしゅ)」と「F1種(えふわんしゅ)」があります。在来種とは、その土地の環境に合うように代々受け継がれていて、味や形が固定されたものが育ちます。昔ながらの味や特徴的な味を楽しむことができます。

F1種は、特性を活かした品種のかけ合わせで 、一代目のときだけに両親の優れた形や味などの特徴を持って育ちます。
栽培の安定や耐病性にも優れ品種の特性が一定というメリットがあるので現代の生産の効率や流通形態に適しています。
※在来種は固定種とも呼ばれています。F1種は、Filial 1 hybrid の略称。

一度途絶えかけたタネ?!

 「在来種」の野菜は、栽培の難しさや収量の不安定さから流通量が減り、数軒の生産者で守っている品種(タネ)も少なくありません。
宮崎で江戸時代から盛んに栽培されていた伝統野菜「佐土原(さどわら)なす」は、収量の良い新品種の台頭や、高温下で赤みを帯びて見栄えが悪く店頭から敬遠され、戦後には市場から姿を消してしまいました。しかし、2000年に、県が保管していたタネからたった4粒のみ発芽させることに成功。今では見事復活を遂げていますが、一度は途絶えかけた過去を持つ野菜なのです。

地元で愛され続けてきたタネ

 「在来種」の野菜は、育てにくいのでたくさん作れず、なかなか市場に出回りません。それでも今も育てられているのは、「おいしい」から。「在来種」は、地域に根ざした野菜が多く、郷土の文化と結びついているので、地元の人にとっては、毎日食べ飽きない、生活に欠かせない食材です。
例えば埼玉県に伝わる、「埼玉青なす」は巾着型で果皮は鮮やかな緑色のナスです。
加熱すると果肉がとろけるほどやわらかに! 塩とかつお節をまぶしただけのステーキの食感はやみつきです!

多様なタネを未来につなごう

 らでぃっしゅぼーやでは「いと愛づらし(めづらし)名菜百選」として伝統野菜や形自体がおもしろい”めづらしい”野菜を、大地を守る会では日本各地に伝わる在来品種の野菜をお届けする「日本むかし野菜」として販売しています。多くの方にお召し上がりいただくことで、種を守り、地域ごとの多様な伝統や食文化を未来につないでいきます。

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食べて、タネを守る支援

らでぃっしゅぼーやでは2004年から「いと愛づらし野菜セット」の売上の一部を、在来種を次世代につなぐ活動をしている団体に寄付しています。今年も2団体に寄付予定です。1団体めは、公益財団法人 自然農法国際研究開発センター(長野県松本市)。このセンターでは、種を守るために、地域から種をもらって増やすために育て、採れた種を頒布する事業を行っています。寄付金は、在来種の保存をはじめ地産種子の活用を推進する事業に活用されます。ちょうどこの夏にもこのセンターの種から大きく育った「青なす」がセットに入っています。
2団体目は俵農場(長崎県雲仙市)。公的機関や民間企業ではなく、個人で10種ものじゃがいもを生み出した稀有な農場です。
この農場では、「アルタイル彦星」をはじめ「グランドペチカ」など珍しいじゃがいもの種を開発されています。希少種を次世代につなげていくのは、直接的には生産者のみなさんですが、それは食べてくれる人があってこそつながっていくものです。是非、いと愛づらし野菜セットを食べて、一緒に活動を応援しませんか。

「日本の種子を守る会」のこと

 大地を守る会は、長年有機農業の推進、遺伝子組み換え食品に対する取り組みを行ってきました。2017年2月10日に「主要農作物種子法」(以下、種子法)を廃止する法案が突然に閣議決定されたことを受け、日本の食と農を守るため、生産者・消費者の立場を越えた集まり「日本の種子(たね)を守る会」の設立に携わりました。
戦後の食と農を支えてきた種子法は、民間企業の種子市場参入を妨げているという理由で唐突に、2018年4月1日をもって廃止となりました。
種子価格の高騰や種子の多様性の喪失、また海外バイオメジャー(遺伝子組み換え企業)による日本市場への影響、食料主権が脅かされる可能性などが危惧されています。先人たちが日本の風土に合った品種を育て、継承してきてくれた、貴重な公共財産である種子をこれからも守っていくため、賛同者を増やす取り組みを全国各地で行っています。これまでも、種子法廃止に関する学習会の開催、種子法に代わる条例制定をめざす各地の団体・個人と連携、情報の共有などを行っています。

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