Kit Oisix監修の笠原将弘さん「しょっぱい日も薄い日もあるから、家庭料理は飽きないんだよ」

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Kit Oisix監修の笠原将弘さん
「しょっぱい日も薄い日もあるから、家庭料理は飽きないんだよ」

Kit Oisixがスタートした3年前の最初のメニュー「漬けさばのぶどうおろし」からご一緒させていただいている笠原さん。細部にはっとするような組み合わせや味の発見があって、食べた人、そして作った人の記憶にいつまでも深く残るのが笠原さんのお料理。新作メニュー開発の合間に、Kit Oisixをご利用いただいているお客さまへのメッセージをいただきました。

和食は、あたりまえに食べさせなきゃ

日本人は自分の国の料理をあまりにも食べなさすぎでよくないなと思ってる。“和食の給食をもっと増やしましょう”っていう、小学校給食の委員をやっているので、実際に小学校に出向くことも多いけど、『朝、何食べてきた?』って子どもたちに聞くとたいてい『パン』っていうでしょう。学校の給食もなんだか洋食みたいなものが出る。家に帰ってお母さんが晩にパスタ、なんていったら、一日に一回もお米食べない。

ほかの国の料理が悪いってわけじゃないんだけど、『和食ブーム』だとかいってるくせに食べなさすぎて、これっておかしい。そもそも、自分の国の料理に『ブーム』ってつけてるのは、日本くらいだよね。中国では今、中華料理がブームです、なんて言わないし、イタリア人がイタリア料理ブームなんて言わない。それは、当たり前に食べさせなきゃいけない。日本人はそこがあまりにも恵まれすぎてて、ちょっと感覚が麻痺してるところがあるよね。

僕たちの親世代がみんな体が丈夫で、戦後のあんなところから超スピーディーに復興したのは、和食を食べてたからだと思うんですよ。 ちゃんと白いごはんに味噌汁に、そんなすごい豪勢なものじゃないけど骨付きの魚や、その時季のお野菜を並べて、そういうのが僕はよかったんじゃないかと。

ごはんは腹持ちがいいし、ごはんをちゃんと食べてたからこそ、ここまで来れたって思いますよ。炭水化物抜きダイエットなんて言っちゃあだめですよ(笑)。

(写真)新作の笠原さんKitメニュー「笠原流 こんがり白山鶏のすき煮風/ぷちぷちたらこ入り もやしっ子」

昔のお母さんだって、手抜きの日があったと思う

料理は毎日やることだから、毎日やりたくなるぐらいのことでいい。無理に、気合い入れてやるから疲れる。がんばりすぎない。昔のお母さんだってね、すっごい手抜きの日があったと思う。あとね、みんな今レシピばっかり見て作ってる。レシピがないと作れないって言ってるけど、昔うちのおふくろとかおばあちゃん、『大さじ』なんて使ってなかったと思うし、カップ何ccなんて、ぜったい量ってないんですよ。

だから、ちょっとしょっぱい日があったり、薄い日があったり。でもそれでいいと思いますよ、家庭の料理は。だから毎日食べても食べ飽きないんだと思う。
吉野家だっておいしいけど一週間続けて食べたら飽きるもん、自分で実験してみたけど(笑)。あまりにも味が平均的すぎて。だからそれぐらいに、気軽にね。

自分の国の料理なんだから、もっと気軽にやったらいい

和食って、なんか難しいっていうでしょう。それも意味が分からない。僕からすればイタリアンとかフレンチのほうが難しいと思うよ。
それはやっぱり日本人のDNAで、ぜったい出汁飲んだらうまいとか、醤油の焦げた臭いをいい香りって感じる部分があるわけだから、そんなにハードルが高いことじゃないと思うんだよね。 それをお店の懐石料理みたいにイメージして、うまく出汁がとれないとか。最初から自分でハードルを高くして、おっくうにしちゃってる。 別に出汁取らなくていい料理だっていっぱいあるんだし、自分の国の料理なんだからもっと気軽にやったらいい。

一汁三菜ってよく言いますよね。でも、昔なんか一汁一菜くらいだったと思う。ごはんをおいしく炊いて、ちょっと具にお野菜たっぷり入った味噌汁を作ったら、もうあとはおいしそうな鮭売ってましたって、ただ焼くだけでいい。それになんとなく、昔の家はなんとなく漬けてある漬物があったりとか、豆腐屋が豆腐売りに来たから買って冷奴でも添えようとか、多めに作った前の日の煮物があったりとか、それでたぶん賑やかになってたんだと思いますよ。

それを全部、“今日も三品作らなきゃ!”ってなるから面倒くさくなる。煮物なんか多めに作ったら、二日三日それでいけるから。そういうふうにしていったら僕はいいと思う。あとは冷奴とか納豆とか。パッと出せるもので。“残り物”っていうからいけないんですよ。『次の日のほうが味がなじんでおいしい』『むしろ今日の方が本番だ!』くらいに言ってほしいね。

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